2010年01月26日
草枕
学生時代に読んだが、今改めてゆっくりとゆっりと読んだ。
(150ページ足らずを2か月かかりました・笑)
今読んで、はじめて本当の中身が理解でき、多くの共感を得た。
人生観、芸術観、美と言うものについて書かれているが、特に共感
した部分(冒頭の有名な部分は除く)の一部をご紹介します。人生
経験豊富な方にはコメントは不要でしょう。
「世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年
にして明暗は表裏の如く、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。
三十の今日はこう思うて居る。--喜びの深きとき憂いよいよ深く、
楽しみの大いなるほど苦しみも大きい。これを切り放そうとすると身が
持てぬ。 金は大事だ、大事なものが殖えれば寝る間も心配だろう。
恋はうれしい、嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。
うまい物も食わねば惜しい。存分食えばあとが不愉快だ。」(一部省略)
(40を過ぎてこの人生感が実感できるようになりました)
「普通の画は感じなくても物さえあれば出来る。第二の画は物と感じと
両立すれば出来る。第三に至っては存するものはただ心持ちだけで
あるから、画にするには是非ともこの心持ちに格好なる対象を択ばな
くてはならん。(中略)今わが画にして見ようと思う心持ちは複雑であ
るだけにどうも一枚のなかへは感じが収まりかねる。(中略) 生き別
れをした吾が子を尋ね当てる為、六十余州を回国して、寝ても醒めて
も忘れる間がなかったある日、十字街頭にふと邂逅(かいこう)して、
稲妻の遮るひまもなきうちに、あっ、ここに居た、と思うようにかかなけ
ればならない。それがむずかしい。(中略)
こんな抽象的な興趣を画にしようとするのが、そもそも間違いである。
人間にそう変わりはないから、多くの人のうちにはきっと自分と同じ
感興に触れたものがあって、この感興を何等の手段かで、永久化せん
と試みたに相違ない。試みたとすればその手段は何だろう。
忽ち音楽の二字がぴかりと眼に映った。なるほど音楽はかかる時、
かかる必要に逼られて生まれた自然の声であろう。」
(芸術の本質論だと思いました)
・・・・・長くなりました。それにしても漱石は、面白く奥が深い。
エリートであり低俗であり・・・つまりは人間臭いのが奥行きのある所以
なのでしょう。
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千葉市/工務店/注文住宅/玉川ハウジング
投稿者 tamagawa : 2010年01月26日 19:06